Collaboration Works - Escape From Chaos - Fumi Kikuchi × Miyuki Hirashima|hueLe Museum|

Escape From Chaos
フォトグラファー
菊地 史
アートディレクター
平島 みゆき

2023.07.18
閉じ込められた“生の感情”を呼び覚ます、
夢のシーンを紡ぐようなフォトストーリー
ファッション広告やモード誌でひっぱりだこのフォトグラファー菊池史氏と、時代の気分を伝えるグラフィックセンスが高く評価されるベテランアートディレクター平島みゆき氏がコラボしたアートフォトシリーズ『Escape From Chaos』。今回、GINZASIXのhueLe Museumのショップでその一部が展示される。人の心の奥底にある得体の知れない不安や焦燥を呼び醒ますような作品たち。Night mare、Pomegranate curse、Captive、Sadness of waterと名付けられた全4作のビジュアルはどれも、危ういほどに苦しく、切ない。そして非常に幻想的で、どこかエロティックで。そこには、膨らみすぎた不安や混沌に必死で対峙し、そこから逃れようとしている人間の姿が浮かび上がる。
「悩みとともに生きている感情」は写真に写せるのか?
この作品を作るきっかけについて、菊池氏は語る。
「最初に考えたのは、ダークでありながら美しいビジュアルにしたいということ。普段の撮影の中では泣いたり叫んだり、暴れまわったり、心のざわついたところは見せないようにすることが大半です。それはそれで可愛かったり、格好が良かったりして素晴らしい。でも、違う景色も見てみたくなったんです。一見普通に見える人も、家族、仕事、お金、尽きない悩みと一緒に生きていること。その感情は写真に写せるのか試してみたくなりました」




先の見えない混沌とした時代を生きる私たち
コラボレーションでの作品づくりがスタートしたのはコロナ禍真っ只中の時だったそう。ただ、根底にあるのはコロナ禍がもたらした不安だけではないと平島氏は話す。
「先が見通せない時期だったことは確かですが、それよりだいぶ前からやりたい事と仕事環境のギャップが自分の中でも持てあますようなストレスだった事もきっかけでした。商業的成功が最優先になることで、発想の自由さが排除されていくような」
Escape From Chaosの作品には、今を生きる多くの人が心の奥底に密かに抱えている不安を言い当てたかような、こんな言葉が添えられている。
『先の見えない混沌とした時代を生きる私たち。思うようにことが進まず、見えない何者かに押さえつけられているような苦しさの日々。』

自分の思いに従って生きる勇気
そして、この作品は、心につかえた得体のしれないものを直視し、それに縛られることなく、自分が思うままに生きることをメッセージしてくる。平島氏は続ける。
「自分の思いに従って生きることは孤独や苦悩をともなうかもしれない。でも、やり遂げた時、そこから抜け出した時には、必ず、至福の喜びと光を見出すことができる」




“感情”はときに厄介だけど、それこそが至福の源
Escape From Chaosは問いかけてくる。私たち自身が感じている“閉塞感”、それを作り出しているのは、実は私たち自身ではないか。血の通った温かみのある“感情”から目を背け、自らの手で押さえ込み、閉じ込めて、無かったもののように扱っているのでは?
菊池氏は、この作品を通じて観る人に感じてほしいのは“感情”だと言う。
「感情とは一体、なんだろう? そんなことを皆さんに聞いてみたいです。僕は、失敗や後悔など、小さな事でも心に引っ掛かりがあると、ふとした瞬間に急にフラッシュ バックして思い出されたり、悩んだりします。爆発はしませんが、歌ってみたりして、ぐっと詰まった思いを吐きだしたり。そういう、ちょっと厄介で生々しい感情についての思いを共有したいです」
Escape From Chaosに添えられた文章はこんな言葉で閉じられている。
『自ら感情を解放することによって、五感で至福の感覚と外界との融合を感じ多幸感を得る。』
菊地 史
Fumi Kikuchi
1978年 神奈川県生まれ
2001年 横浪修氏に師事
2004年 独立
2006年 impress+ 所属
自身の作品制作を行いながら、ファッション写真・広告写真・CD ジャケット写真などを手がける
平島 みゆき
Miyuki Hirashima
神奈川生まれ
植田充氏のアシスタントを経て独立
1991年 有限会社平島みゆきデザイン事務所設立
アドバタイジング・プロダクトデザイン・ パッケージデザイン・ ブックデザイン等の ディレクション、ブランディング等を手がける